上海モーターショー2025が開幕し、電気自動車(EV)の未来を変える“充電革命”が話題をさらっています。
中国のEV大手・BYDが発表したのは、わずか5分の充電で400km(CLTC基準)を走行できる超高速EV技術。
これまでの「充電が遅い」というEV最大の弱点を覆す革新であり、ガソリン車と同等の補給スピード=“油電同速”を本格的に実現する第一歩とも言えます。
本記事では、上海モーターショー2025で披露されたBYDの最新プラットフォーム「スーパーeプラットフォーム」を中心に、その仕組み・搭載車種・インフラ整備・日本勢との比較までを徹底解説します。
BYDが発表した5分充電で400km走行可能なEV技術とは?
BYDが上海モーターショー2025で発表したのは、「スーパーeプラットフォーム(Super e-Platform)」と呼ばれる次世代EV基盤です。
この技術は、従来のEVでネックだった「充電時間の長さ」を根本から解決するもので、ガソリン車と同じスピードで“補給”できるようになる、いわばEVの常識を塗り替える技術です。
📌 注目の技術ポイントは以下の3つ:

① 全域キロボルト高電圧アーキテクチャ(最大1,000V)
- 家庭用電圧の約10倍となる高電圧システムをEV全体に導入
- バッテリー、モーター、電源制御ユニットすべてがこの高電圧に対応
- 高速な電流供給が可能になり、超短時間での充電が実現
② フラッシュチャージバッテリー(Flash Charging Battery)
- 1,000Aの大電流・10Cの充電レートを実現した次世代バッテリー
- バッテリー内部の「イオンの通り道(チャネル)」が最適化されており、エネルギーが一気に流れる
- たった5分の充電で400km(CLTC基準)分の走行が可能に(理論値では1秒=2kmの補給速度)
③ SiC(シリコンカーバイド)パワーチップ
- 一般的な半導体よりも電力変換効率が高い次世代素材を採用
- 最大1,500Vに耐え、1メガワット級の充電出力に対応
- 電力損失を抑えつつ、高速充電を安定供給
このように、BYDはハードウェアと制御技術の両面で飛躍的な進化を遂げ、“5分で400km”という衝撃的な充電速度を実現したのです。
スーパーeプラットフォーム搭載車種
BYD Han L(ハン エル)

Han Lは、BYDのスーパーeプラットフォームを搭載した最初のモデルの一つで、2025年4月9日に中国市場で正式に発売されました。
主要スペック
- 車体サイズ: 5050/1960/1505 mm(全長/全幅/全高)
- ホイールベース: 2970 mm
- バッテリー技術: フラッシュチャージバッテリー(10C充電レート)
- 充電性能:「理論値」
- 5分間で400km(CLTC基準)分の充電が可能
- 6分で10%から70%まで充電可能
- 20分で0%から100%まで充電可能
- 電圧システム: 1000V高電圧アーキテクチャ
- モーター: 最高回転数30,000rpm
- 充電方式: デュアルガン充電対応
バリエーションと価格(EV)
- 701km LiDAR Premium: 219,800元(約30,000 USD)
- 701km LiDAR Flagship: 239,800元(約32,700 USD)
- AWD LiDAR Flagship: 279,800元(約38,100 USD)
バリエーションと価格(PHEV)
- 200km LiDAR Premium: 209,800元(約28,600 USD)
- 200km LiDAR Flagship: 229,800元(約31,300 USD)
- AWD LiDAR Flagship: 259,800元(約35,400 USD)
BYD Tang L(タン エル)

Tang Lは、Han Lと同様にスーパーeプラットフォームを搭載したSUVモデルで、同時期に中国市場で発売されました。
主要スペック
- バッテリー技術: フラッシュチャージバッテリー(10C充電レート)
- 充電性能: 5分間で400km(CLTC基準)分の充電が可能
- 電圧システム: 1000V高電圧アーキテクチャ
- モーター: 最高回転数30,000rpm
- 最高速度: 300km/h超(中国市場向けモデル)
上海モーターショーでの反響
上海モーターショーでは、BYDのスーパーeプラットフォーム技術と、それを搭載したHan LとTang Lが大きな注目を集めています。
特に、5分間の充電で400kmの走行距離を確保できる技術は、EVの最大の弱点とされてきた充電時間の問題を解決する可能性を示しており、業界関係者やメディアから高い評価を受けています。
中国メーカー各社はEVの課題である充電時間の短縮にしのぎを削っており、BYDの新技術はその最前線に位置づけられています。
この技術革新により、EVの普及がさらに加速することが期待されています。
日本メーカーの動向
上海モーターショーでは、日本メーカーもEV市場での巻き返しを図るべく、新型モデルを発表しています。
トヨタはスマートフォンのような使い勝手の良さを実現したという新型EVを初公開し、中国市場での存在感を高める戦略を打ち出しています。
しかし、充電技術においては、中国メーカーが先行している状況が明らかになっており、日本メーカーにとっては大きな課題となっています。
今後の展望
BYDのスーパーeプラットフォームとメガワット級充電インフラの組み合わせは、EVの普及をさらに加速させる可能性を秘めています。
特に、充電時間がガソリン車の給油時間と同等になることで、EVに対する消費者の不安が大きく軽減されることが期待されます。
また、この技術革新は、中国が世界の電動化をリードする役割を強化することにもつながるでしょう。
BYD会長兼社長の王伝福氏は、「EVユーザーの充電に対する不安を完全に払拭するためには、ガソリン車並みの補給スピード、すなわち『油電同速』を目指すことが重要」と述べており、今後も技術革新を続ける意欲を示しています。
まとめ|BYDが提示した“EVの新常識”とは?
今回の上海モーターショー2025で、BYDが発表した「5分充電で400km走行可能なEV技術」は、これまでの“EV=充電が遅い”という常識を根底から覆す革命でした。
わずか5分でガソリン車と同等の補給が可能となることで、「充電の待ち時間」という最大のストレスが解消されれば、EVは“選択肢”から“当たり前”の存在へと変わっていくでしょう。
しかも、BYDは技術だけでなくインフラ整備にも本気で取り組んでおり、すでに中国全土に4,000か所以上のメガワット級ステーションの設置を計画。これは他メーカーにとって大きなプレッシャーとなるはずです。
「充電は不便」というイメージを一掃するこの技術は、EV普及を一気に現実に引き寄せるブレイクスルー。次に“EVの常識”を塗り替えるのはどのメーカーか──。世界のモビリティ戦争は、いよいよ次のステージに突入しようとしています。
参考情報
- BYD公式発表(2025年3月17日)
- 上海モーターショー2025公式情報
- TBS NEWS DIG(2025年4月23日)
- テレ朝NEWS(2025年4月23日)
- 毎日経済(MK)(2025年4月21日)
- Car News China(2025年4月9日)